「障がいのある青少年に対する修学及び就労機会創出の支援事業」の第一期助成金を利用された国立大学法人 宮城教育大学 しょうがい学生支援室 コーディネーターの及川 麻衣子様に機器購入の目的や申請の際の大学の状況についてお話しを伺いました。
学校紹介
国立大学法人 宮城教育大学 しょうがい学生支援室
宮城教育大学は学校教育を中心とした教育実践の向上と教育研究を推進する「教職員のための大学」であるとともに、研究教育の体制を整え活発な交流で社会全体に門戸を開く「開かれた大学」として、教員の養成に全力を注いでいます。
学生主体のボランティア活動から出発したしょうがいのある学生への支援を大学が受け継ぎ、「しょうがい学生支援室」を設置し、学生と教職員が一体となって支援をしています。特別支援教育を専門とする教員が、それぞれの専門のしょうがい部会(視覚しょうがい、聴覚しょうがい、発達しょうがい、肢体不自由、病弱・虚弱)の部会長としてしょうがいに応じた対応をすると共に、コーディネーター・ボランティア学生がチームを組んで日常的な支援をしています。
助成を申請した
きっかけ
支援を必要とする、
まだ見ぬ新入生のために
申請当時、何らかの支援を必要とする23名の学生が在籍していました。限られた予算の中「今、必要なもの」を優先的に買ってしまう現状で、さまざまなしょうがいのある学生が、宮城教育大学で大学生活を送りたいと思っても、必要な機材は十分に揃えることができていません。今後いろいろな学生が入学してきたときに十分な対応ができる環境を整備するために申請しました。
支援室からの外部助成金への申請は初めてのことだったため、支援室として応募していいものかどうかの確認からはじまりました。学内の物品を購入する部署や予算管理部署など、他部署とどういう連携が必要かが分かり、良い経験になりました。
助成金の種類
備品、アプリケーション
及びライセンス購入
効果の高い物を
将来を見据えた物品選び
自分の聴覚を活用しながら聞こえを補完する機器を貸し出しています。聴覚しょうがいのある学生が8名在籍しているため種類と数を増やし、新たに購入しました。
学生のニーズや機器の性能もさまざまです。講義の音声に集中するために、デジタル耳栓やノイズキャンセリングを使用していながら、学生自分に合った機器で得たい情報をきちんと受け取れるように準備しました。
軽量で持ち運び可能なスロープは車いすを利用する学生の行動範囲に合わせて使用することが可能です。学年が上がることで行動範囲が変わる場合にも対応できます。
階段で使用できるイーバックチェアは、災害でエレベーターが使用できない場面で、車いす利用者はもちろん、けがで歩行が困難な学生も階下へと運ぶことができます。
学生自身にとっては、しょうがいによって生じる困り感はある意味日常のことになっています。一般化されている製品や、新しい機材に触れながら、その点が少し軽減され、自分らしく生きていくツールと出会ってもらいたいと思っています。支援室での何気ないやりとりの中で学生からポロッと出てきた発言に対して職員が機材を提案し、実際に使ってもらうことも多いです。気軽に使ってもらってだめだったらやめればいいわけで、学生たちの経験値を高める機会を増やしたいと思っています。
購入後の
効果
講義の場だけでなく、
広がる利用場面
しょうがい学生支援室の機材は、今までは講義の前に貸し出し、講義終了後に返却してもらっていました。機器購入後は種類や数が増えたことで、長期間の貸し出しや複数利用者の貸し出しにも対応できるようになりました。新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン授業が主流になったときは、学生が自宅で使用することができ、大いに役立ちました。
長期間の貸し出しができるおかげで、学生たちは講義以外の生活の場面でもこれらの機器を利用し、その使い心地を試すことができていると思います。機器が高額なため、大学時代に機器を使い比べ、社会に出てから自分に必要なものを選定できる良い機会になっています。
助成金の利用により、学内でも変化がありました。しょうがい学生支援室で製品を購入したことで、学内に向けて製品情報を提供する機会にもなりました。「この金額ならうちの部署の予算で買えますよ」と言ってもらえることもあり、学内のいろいろな部署と交流が生まれ、お互いに情報共有ができたことは大きな収穫でした。