「障がいのある青少年に対する修学及び就労機会創出の支援事業」の第四期助成金を利用された九州大学。キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室 准教授 横田 晋務(よこた すすむ)様と、助教 下中村 武(しもなかむら たけし)様に申請のきっかけや備品の利用方法についてお話を伺いました。
キャンパス
ライフ・
健康支援
センター紹介
九州大学
インクルージョン支援推進室
九州大学は東西約3km、南北約2.5kmに及ぶ自然豊かな伊都キャンパスを中心に、2万人近くの学生が通う国立大学です。
九州大学 キャンパスライフ・健康支援センター
インクルージョン支援推進室では、九州大学全ての構成員が障害※1 のある学生の権利を尊重し、社会的障害を除去し、その個性と能力が発揮できるよう修学環境の整備を推進していきます。
「障害」、「障害者」の表記:
※1 本学では、障害者権利条約の理念に則り、 「障害」とは個人に帰属するのではなく、 個人と社会との間にある取り除くべき社会的障壁であると考えています。このようなことから、本学ホームページや各種広報物の中においても 「障害」、「障害者」と表記しています。
助成を申請した
きっかけ
ハイブリッド型授業での
合理的配慮 ※2
本学では障害(慢性疾患・難病を含む)があり、通常の講義の受講に困難を生じている学生が状況に応じて、授業・試験に関する合理的配慮の申請を行うことで障害に応じた配慮を受けることを可能としています。『合理的配慮』を申請した学生139名を含め、全学で500名ほど在籍している障害のある学生に、授業などでどのような配慮をすれば良いのかを継続して検討してきました。
例えば、発達障害や聴覚障害のある学生は、グループワークなどの授業でいろいろな方向から発言されると、誰が何を発言しているのかがわかりません。そういう場面で今回申請した『ロジャー セレクト』をグループメンバーの中央に置くことで、直接補聴器から音声を聞くことができ、聞き取りが可能になります。また『ロジャー ネックループ』という機器ををパソコンにつなぐことで会話を文字に変換することができ、聴覚的に聞きやすくするだけでなく、視覚的にも支援することが可能になりました。
コロナ禍、2021年度は完全なオンライン授業だけではなく対面授業が増えるなどハイブリッド型の授業を行うことになりました。通常の対面授業のあとにオンライン授業がある場合は、オンライン授業を受けるための教室にさまざまな授業を受講する学生が集まります。
発達障害のある学生は周囲の声をシャットアウトできず、落ち着いて授業を受けづらい環境になるため、このような場合にもこれらの機器や専用のノイズキャンセリングヘッドフォンの貸し出しが役立っています。
合理的配慮:
※2
障害のある人とない人の平等な機会を確保するために、学校や周りの人等が過重な負担のない範囲で実施するべき配慮。合理的配慮では教育の本質を変更しない範囲内で、障害の状態に合わせて変更や調整が行われます。
(九州大学基幹教育院HPより引用)
助成金の種類
備品・アプリケーション
支援機器を
試せる環境
社会に出る前に
いろいろな選択肢を試してほしい
発達障害の学生の中には「聞こえづらさはあるけれど自分でなんとかしなきゃ」と思う学生が多くいます。自分自身でなんとかできるという学生も90分の授業を集中して聞くと疲れてしまいます。
今までのやり方では対応できなくなった学生に「合理的配慮という制度があるよ」という声かけから始まり「ロジャーフォーカスという支援機器があるよ」と情報提供し、試用してもらっています。
支援機器を使うことでストレスなく授業を聞くことができ、「集中が途切れずに授業を受けられました」と機器の存在に驚き、自分で購入するケースにつながることもあり、学生のうちにいろいろな支援機器を試し、失敗しながらもきちんと選び取っていってほしいと考えています。
九州大学で
目指す支援の形
ピアサポーター ※3を
希望するきっかけ作り
授業で聴覚障害のある学生をサポートするためのノートテイクを行う学生(ピアサポーター)は現在13名ほどがおり、支援を行っています。9名ほどがノートテイクのトレーニング中です。
入学式では会場に設置された大型スクリーンにピアサポーターが入力した文字とピアサポーターの名前が表示されるようになっていて、学生がピアサポーターを希望する大きなきっかけになっています。
この他、災害時の障害のある学生の支援を目的にエアストレッチャーやベンリー間仕切りも申請しました。今回の助成金で本学が目指す障害のある学生の支援の形に近づけることができました。
アクセシビリティ・
ピアサポーター学生: