活動事例

障がいのある青少年に対する修学及び 就労機会創出の支援事業

実施報告:学校法人駒澤大学

聴覚障がい学生に対する安定した情報保障

学生支援相談課長
鎌田 麻美
(かまだ あさみ)

駒澤大学では、当財団の「障がいのある青少年に対する修学及び就労機会創出の支援事業」の第7期(2024年度)助成金を利用し、聴覚障がい学生の情報保障と学生ボランティア(ピアサポーター)育成のための機材を拡充しました。聴覚障がい学生の増加による補聴機材の不足や授業形態の多様化に対応すると共に、十分なスキルを持ったピアサポーターの養成と確保を通じて、情報保障の安定と向上を目指しています。 今回は、駒澤大学 学生支援センター 学生支援相談課長の鎌田 麻美さんと同大学の卒業生でありピアサポーターアドバイザーの丹羽 道海さんに障がい学生の支援体制や購入した機材の活用状況などをお伺いしました。また、ピアサポーターの日野 祐介さんと金城 妃那子さんに実際の支援活動の様子についてお聞きしました。

駒澤大学の
取り組み

駒澤大学の障がい学生支援

駒澤大学では、「駒澤大学障がい学生支援に関する基本方針」に基づき、2014年度に「駒澤大学障がい学生支援規程」を制定し、「合理的配慮」に基づいた修学上の支援への取り組みを開始しました。当初は大学教職員が、現在は教職員とピアサポーターが一体となって、修学上の合理的配慮が必要な学生に対し支援を行っています。

障がい学生支援の業務は、学生支援センターの学生支援相談課障がい学生支援係が担います。資格と経験を持つ障がい支援コーディネーターと事務職員が、障がい学生の希望内容の聞き取りから支援決定までの手続きを含めたサポートや教職員との授業の調整などを行っています。

写真:今回の取材に対応いただいた4名
(左から)日野 祐介様、金城 妃那子様、鎌田 麻美様、丹羽 道海様

助成を申請
した背景

聴覚障がい学生の増加と
学生ボランティアの育成

ここ数年で聴覚障がいを持つ学生の数が急増し、いかに安定した情報保障を提供するかが課題となっていました。本学では有償の学生ボランティアであるピアサポーターの助けを借りて、授業中のPCノートテイクを中心とした支援活動を行っています。

PCノートテイクは、講義内容や質疑応答、教室の雰囲気も含めた情報をリアルタイムに文字で伝えるもので、ピアサポーターが2人1組で利用者とともに授業に参加して行います。ピアサポーターは所定の養成講座でPCノートテイクのスキルを身に付け、障がい学生との交流会に参加し、障がいについての理解を深めてから支援活動を行います。

聴覚障がい学生に対する情報保障には、質の高い専用機材の提供とスキルを持った人材の養成が不可決です。そこで、聴覚障がい学生の増加に対応した機材の充実とピアサポーターの育成環境の見直しを図るため、今回の助成金応募に至りました。

写真:左から金城 妃那子さん、日野 祐介さん
ピアサポーター練習会で
PCノートテイクの練習をペアで行う様子

購入した機材の
活用状況

PCノートテイクの練習会や
体験ワークショップの内容が充実

以前はPCノートテイクにも大学のネットワークを利用していましたが、校舎・教室による通信環境の違いや突然のアクセス集中によって、急な切断などのトラブルがありました。そこで今回、VPNアクセスルーターを新たに導入し、聴覚障がい学生とピアサポーターのみが利用できる専用ネットワークを用意することで、安定した情報保障が提供できるようになりました。

また、ピアサポーターは、PCノートテイクのスキルアップを目的として、自主的な練習会を定期的に開催しています。ネットワーク環境が安定したことで、動画教材を使った練習や外部講師のオンラインによる技術指導などがスムーズに行えるようになり、ピアサポーターの満足度も向上しました。

さらに、補聴援助システムのロジャーや音声認識特化型BluetoothマイクのAmiVoiceを追加購入して専用機材を拡充した他、新規にイヤーディフェンダーを導入しました。ピアサポーターや教職員、一般学生の理解促進のため、イヤーディフェンダーを使って聴覚障がいが疑似体験できるワークショップを実施しています。音の聴こえづらい世界を実際に体験してもらうことで当事者の困難を実感し、理解を深めるうえで大変効果的です。

今後の方向性

積極的な情報発信により
障がい学生支援への理解を促進

今年、大学のホームページを改訂し、障がい学生支援に協力いただける学生への呼びかけを強化しました。支援事例の紹介や教職員向けの専用ページの設置なども行って、情報発信の積極化に着手したところです。オープンキャンパスなどのイベントでは、支援が必要な受験生に相談できる機会を設けて、PCノートテイクの体験ができるようにしました。

また昨年度から、ピアサポーターのモチベーションアップに繋がるよう、PCノートテイクで身に付けた技術に応じて、一般財団法人オープンバッジ・ネットワーク ※1 内の「障がい学生支援委員会」が認定するオープンバッジの発行を開始しました。聴覚障がい支援においては、PCノートテイクの活動は、厚生労働省指定の要約筆記者のスキル習得に繋がります。ピアサポーターに参加する動機づけのひとつとして、さらには就職活動やキャリア形成にも役立てて欲しいと思います。

この度の助成を通じて、ピアサポーター養成のための安定した環境を構築し、PCノートテイクの技術向上に努めると共に、情報保障に必要な様々な機材を拡充することができました。これにより、聴覚障がい学生に対する支援の幅が広がり、合理的配慮の質が向上しました。今回整備した環境を最大限に活用して、障がい学生支援をさらに充実したものにしたいと考えています。

一般財団法人
オープンバッジ・ネットワーク:

※1  国際基準に基づき、学習・スキル・資格・実績などをデジタルで証明する「オープン・バッチ」の発行・整理を行う。

ピアサポーター
のお話

写真:日野様、金城様のインタビュー中の様子
日野様、金城様のインタビュー中の様子

※ 所属・学年はインタビュー当時のものです。

日野 祐介 様
(法学部法律学科4年)

PCノートテイクは、講義の内容だけでなく、授業の場の雰囲気もいかに文字の情報で伝えるかが大事になってくる活動です。教室の雰囲気はリアルタイムに変化します。楽しい雰囲気、ピリピリした雰囲気、シーンとした雰囲気。そうした教室の空気感も文字で伝えていくことは、難しいのですが意義深いことだと感じています。

例えば、よく冗談を言う先生の授業では、その冗談も文字で工夫して伝えます。利用者の方に笑ってもらえたときには、自分のPCノートテイクを通じて、「この雰囲気を感じてもらった」、「ちゃんと伝わった」と、とても嬉しい気持ちになります。

学びはみんなで参加するものです。これから大学で学ぼうと考えている聴覚障がい者の方には、私たちも一緒に学びたいという気持ちがあるんだということを伝えたい。障がいの有無に関係なく学べる環境づくりこそが駒澤大学が求める学びの精神だと思います。
 

金城 妃那子 様
(文学部英米文学科2年)

高校時代に見たテレビドラマで、聴覚障がい者を支援するPCノートテイクについて知りました。当時は漠然と人の役に立ちたいという憧れのような気持ちだったのが、大学でピアサポーターのことを知り、一気に身近に感じられるようになりました。

新入生セミナーでタイピングを教わったことも、ピアサポーターに参加したきっかけのひとつでした。タイピングスキルに自信がついたことで、PCノートテイクの活動に一段と興味を持つようになり、応募を決めました。

障がいなどの違いがあっても、他の学生と何も変わることはありません。同じタイミングで共感できることが大切だと思って、ピアサポーターの活動を続けています。たくさんコミュニケーションを取って楽しみながら仲間として、一緒に学生生活を送れたらいいなと思っています。