品川区立第一日野小学校は、2023年度と2024年度に特別支援学級でプログラミング貸出教材を使用した授業を行いました。授業で工夫したことや児童の様子などについて、片山有香子先生、首藤伸明先生、神代美由紀先生、首藤浩子先生にお話を伺いました。
小学校の紹介
品川区立第一日野小学校
品川区立第一日野小学校は、共生社会の実現に向けて、「みんなちがってみんないい」を合言葉にダイバーシティ&インクルージョンの理念を大切にした学校経営を行っています。品川区の知的障害特別支援学級設置校の1校として、少人数によるきめ細かな指導を実施しています。

実際に教材を
使ってみて
動くトラックが
児童のチャレンジを促す
児童の反応はとても良かったです。付属の指導案では効率の良い配達ルートを考えるという課題設定ですが、自分でどこに行くかを決めて帰りは好きなところを回ってきてもいいなど、児童が自己決定できる使い方にアレンジしました。その結果、自分で決めてそのとおり動いたことに喜びを得て、何度も何度も挑戦していた児童もいました。
色を組み合わせたカラーコードシールを使うことでプログラミングできるので、言葉で「直進」と言ってもわからない児童でも「この色の組み合わせだとまっすぐ進むよ」と教えれば理解できます。

自分でルートを考えます
特別支援学級の児童は、失敗を恐れるあまり、萎縮してしまってやらないということが少なくありません。この教材では、実際に動くトラックロボットの魅力にひかれて、たとえエラーになっても、本人は失敗したとは捉えず、「ついやっちゃった」、もう一度スタートに戻してシールを貼り直してみようとなります。何度も自分の考えを試すことを促してくれる優れた教材だと思います。
授業で工夫
したこと
オリジナルのテープを作り
児童の理解をサポート
授業はスモールステップでできるように工夫しました。まずは教材の地図をコピーして行く先を1か所に絞ったもので考えさせてから実際の地図で動かしてみる。次に2か所行ってみよう、最後は3か所で最短ルートを考えてやってみよう、と段階を踏んで進めました。はじめにシールを貼る楽しさを体験させてから、徐々に最終目的の最短ルートに導くというやり方です。

トラックロボットに左右の向きを色で示したテープを作って貼るという工夫もしました。自分の側からの左右はわかっても、トラックの向きによって左右がわからなくなることもあるので、児童の方向感覚をサポートできます。頭の中でルートを描けない児童には、テープで作った矢印を地図に貼りルートを確認してから、カラーコードシールを貼るという手順をとりました。ルートを見える化する工夫です。

低学年の児童にも「みんチャレ」を使った授業を行いました。まだ指先が十分発達しておらず、教材付属の荷物をトラックロボットに載せるのが難しい児童もいます。そこで、マグネットにフルーツのシールを貼ったオリジナルの荷物を作って、扱いやすくしました。宅配に見立てたトラックロボットが届け先に止まって、「お届け物です」と言いながら楽しめるところにひかれている様子でした。公開授業では保護者の方々も参加して、「国技館にバナナを届けよう」、「お相撲さんが待ってるよ」などと、楽しい授業ができました。
貸出教材に
対する評価
児童一人ひとりに合わせられる
柔軟性を持った教材
プログラミング教材といえばタブレットで操作するものが多いですが、「みんチャレ」はトラックロボットという具体物が動くところが魅力です。通常の学級ならタブレット上の教材でも論理的思考を学ぶことができますが、特別支援学級では実際に目で見て手を動かしてみることがとても有効です。熱中して休み時間まで取り組んでいる児童もいました。

学びを助けます
言葉で自分の考えを説明するのが苦手な児童が多い中、この教材を使って自分が頭で描いた通りできたことを友達や先生に言葉で伝えようとする様子が見られました。また、ある児童が「すごく頭を使ったよ」と言っていたのも強く印象に残っています。それだけ一生懸命、自分で考えたということで、与えられたものをこなすだけの教材ではないところが良かったのだと思います。

首藤 伸明 様、片山 有香子 様
2023年度、2024年度と「みんチャレ」を使ってみて、回数を重ねるごとに児童に自分で考える力が身に付くことを実感することができました。次は、自分たちの地域に合わせたオリジナルの地図を作成してやってみることを考えています。特別支援学級の児童は目先のことで意欲的になるか、ならないかが変わります。身近な題材になればもっと楽しんで学ぶでしょう。「みんチャレ」は児童一人ひとりに合わせられる柔軟性があり、教える側の工夫次第で授業の可能性が広がっていく魅力的な教材だと思います。
貸出教材は
どんな教材?
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