「障がいのある青少年に対する修学及び就労機会創出の支援事業」の第一期助成金を利用された広島大学附属福山中・高等学校。申請時の実際や学校内での活用方法について養護教諭の小田 幹子様にお話を伺いました。
学校紹介
広島大学附属福山中・高等学校
自由・自主・自立・自律の精神を追及し、日本と国際社会の第一線をリードする人材の育成を学校の教育目標に掲げています。「ベルもチャイムも鳴らない学校」は生徒自身の判断で行動するという自主性と教育方針を代表しています。
全国に先駆けて中・高6ヶ年一貫教育に取り組んだ学校でもあり、学習内容だけでなく校内運営、教員の教科担当、学校行事、生徒指導、クラブ活動などあらゆる活動が中高一体のものとして進められています。
助成を申請した
きっかけ
他者の目を気にせず、
スムーズに健康診断を。
学校生活で生徒が困難を感じる場面はいくつか存在しますが、そのひとつに健康診断が挙げられます。時間内に多くの生徒を診察しなければならないため、説明は一度だけ。男子生徒に対しては、プライバシーが保たれない状況で着替えなどが行われていました。
一度の説明で全てを把握することが難しい軽度難聴の生徒は取り残され、心と体の性別に違和感を抱える生徒や、皮膚に疾患を抱える生徒のプライバシーを確保できず、上半身裸になることを拒否する生徒もいました。
また校内には「自分だけの空間」がなく、発達に課題のある生徒や心に病気を抱えた生徒が安心して1人で過ごせる場所がありません。教員が近くで見守ることができる『生徒の居場所』の必要性を感じていました。 保健室登校をする生徒たちへの対応は置いていかれがちですが、少しでもこういった生徒たちに対応できるようにしたいと思い、初めて助成金申請を行いました。
助成金の種類
備品、アプリケーション
及びライセンス購入
導入後の効果
設置してみてわかったこと
大型つい立てを使用することで、どのような生徒にもプライバシーに配慮された環境下で健康診断を受けることが可能になりました。 実際の使い方は着替える部屋と診察する部屋を別に用意し、他の生徒に見られることなくスムーズに診察を受けることができます。
また電子黒板の導入により、軽度難聴の生徒は本人のペースで注意事項を確認できるようになりました。生徒が自由に電子黒板を操作できるようにしたので、軽度難聴の生徒だけでなく、誰もが必要な情報を必要なときに確認できるようになりました。
防災用ダンボール製パーテーションは保健室に設置していて、他人の視線が怖い生徒や極度の潔癖症の生徒が安心して自習や課題を行える場所として利用されています。コンパクトに収納でき、保健室に限らず校内のどの部屋でも個室を準備できるため、必要とする生徒がいる場合は早急に対応できます。
生徒にも
好評なわけ
今後も広がる想定外の利用方法
申請前に想定していなかった新型コロナウイルス。これらの備品は感染症の流行下でも活躍しています。マスクの着用が日常的になると、マスクによって声が聞きとりにくくなります。 口の動きを見て理解を深めていた生徒にとって電子黒板は大きな助けとなりました。 表示された文字を自分のペースで確認でき、生徒間でクイズのようなメモを残し合いながら、コミュニケーションツールとしても利用されています。電子黒板とビデオをつなげることで、2つのクラスが1カ所に集合することなく同時に授業を受けられ、密を避けることにも役立っています。
防災用ダンボール製パーテーションは1~3名での利用が可能で、保健室に来る生徒たちの状況により、 個室で利用したり数名で利用したりしながら活躍しています。 健診用大型つい立ては、発熱した患者を囲って隔離することにも役立っています。
備品の購入費のみでなく、設置・操作説明費も交付されるため、機械操作が苦手な人でも電子黒板を使いこなせます。これらの備品があるおかげで、学校生活に困難を感じる生徒たちに役立ち、寄り添うことができました。「困っているところに必要なものをすぐに届けたい」という財団の考えが反映された 申請書や報告書類は簡潔で、申請もスムーズに行えました。