活動事例

児童・青少年に対する IT教育の支援事業

実施報告:生徒一人に一台のIT端末を活用したワークショップ

特別支援学級で
「デジタルアートワークショップ」

8組担任
佐藤 仁美
(さとう ひとみ)

2023年7月、「デジタルアートワークショップ」を東京都小平市立小平第五中学校特別支援学級の公開授業で行いました。本ワークショップはITを用いた様々な活動を多くの人に届けることを目的に、GIGAスクール構想で生徒一人一台配備された学校の端末を活用した当財団の取り組みです。
講師が作った黒い線のみの線画に描画ソフトを用いて思いおもいの色を付け作品を創り出す活動を行います。
「デジタルアートワークショップ」を開催した小平第五中学校8組担任の佐藤仁美先生にお話を伺いました。

中学校の紹介

小平市立小平第五中学校

小平第五中学校は東京都小平市にある市立中学校です。小平第五中学校の「めざす学校像」は『学校は生徒にとって楽しく安心して過ごせる「居場所」であり、自立に向け社会性を身に付ける「学びの場」』としています。

写真:教室でインタビューに答える佐藤 仁美先生
放課後の教室で担任の佐藤先生にお話を伺いました

手探りで
ワークショップ
を設計

やってみることで広がる可能性

学年が異なる26名が在席する8組では、1年生から3年生の多様性のある生徒達がそれぞれの特性にあわせ一緒に学んでいます。
スポンジのように様々なことを吸収して乗り越えて行くことができる、明るく前向きな生徒達です。

今回のワークショップは、柳生千裕(やぎゅうちひろ)さん※1を講師に迎え、学校配備のIT端末上でデジタルアートを制作する体験型ワークショップを開催できないかという相談をCTC未来財団から受け、検討が始まりました。

写真:カラフルな絵を抱えて笑顔の柳生千裕さん
神戸在住の中学3年生 柳生千裕さん

柳生千裕さんプロフィール
(2024年2月現在):

*1  兵庫県西宮市に住む中学3年生。5歳の時に自閉症スペクトラム(ASD)と診断。友達の輪に入るのが苦手で黙々と絵を描く。最初によく描いていたのは棒人間。小学4年生の時に父親が12色のカラーマーカーコピックをプレゼントしたことがきっかけで色に目覚め独学で描く。カラフルな色や幾何学模様が特徴で、見た人が楽しく元気が出る絵を目標にしている。現在、デジタルアートでNFTにも挑戦している。

話を重ねる中で柳生さんの作品のように色とりどりの作品を創り出す体験であれば生徒達にとって楽しく、そして可能性を発見する場になると考え、柳生さんが作った色付け前の線画に生徒達が思いおもいの彩色を施し作品を創り上げるワークショップとして実施することにしました。また生徒達と同世代であり、独学で絵を描いて活動している柳生さんが講師をしてくださるということも生徒達の刺激になると考えました。

写真:3つのモノクロ線画が表示されている
柳生さん制作の線画

実際に授業を
やってみて

同世代同士、初めての体験

線画は柳生さんがデザインしたライオンとチンパンジー、そしてこの日のために新たに描き下ろしてくれたラブラドールレトリバーを使わせていただきました。同世代の柳生さんの作った作品に自分達で描画ソフトを使って色を付けていくという活動に生徒達は興味津々といった様子でした。

写真:教壇の前で説明を行う柳生さん
黒板には生徒達からの
歓迎メッセージが描かれています

一方、講師をするのは今回が初めてという柳生さんでしたが、描画ソフトの使い方や色の付け方などを丁寧にわかりやすく説明してくださいました。生徒達も真剣な表情で柳生さんの話を聞き、3種類の線画の中から好きなものを選び、積極的にチャレンジしていました。

写真:デジタルアートワークショップの授業の様子
思いおもいの彩色をする生徒

生徒達と同じような特性を持つ柳生さんがアート作品を創り出す活動を行っていることは、生徒達にとって、とても刺激を受けたと同時に描画ソフトを使い新しく習ったことを実践できたことは大きな自信につながったように思います。

生徒と
保護者の方
の反応

生徒達の成長を実感

生徒達は自分達でも操作方法を教え合いながら活動に集中し、早々に2枚目の線画の彩色をする生徒も大勢いました。

ワークショップの最後に3年生全員が一人ずつ作品の発表を行いました。「一つひとつ違う色になるよう意識しました」「自分の好きな色を使って作りました」などしっかり自分の言葉で発表する姿に最上級生としての成長を感じました。生徒同士、それぞれの作品を見比べながら興味深くお互いの作品を見せ合う姿が印象的でした。

初めてのデジタルアートワークショップ、初めての描画ソフト、初めての同世代の講師とのふれあいと生徒達にとって初めてのことばかりでしたが、全員がそれぞれのテーマを持って作品を創り上げたことをとても嬉しく思います。

当日は公開授業で保護者の方にも活動の様子をご覧いただきました。ワークショップの後、保護者の方から作品を印刷してもらいたいとのお声をいただくとともに生徒達からも印刷をして自宅に持ち帰りたいと言う声があり、この活動が保護者の方や生徒達にとって充実した活動であったことを実感しました。

ワークショップ
の意義

刺激し、喜び合える存在

柳生さんにとっても初めての講師ということでしたが、生徒達の作品発表に対し「自分とは違う色使いが面白い」「他の人の作品を見ることが出来て刺激になる」とご自分の思いをお話してくださいました。柳生さんのアート制作活動や講師として活動されている姿を通し、8組の生徒達も刺激を受け、いろいろなことにこれからも挑戦してもらいたいと思います。

ワークショップ中、生徒達と柳生さんとの交流の時間は多くはとれませんでしたが、柳生さんが当日着てこられたご自身の学校の制服が本校の制服と似ていたので生徒達は、「クラスメイトみたいだね」と親しみを込めて話していましたが、確かに生徒達に混ざると、以前からのクラスメイトのように溶け込んでいて微笑ましく思いました。

写真:生徒たちが柳生さんを囲んでお礼を伝えています
生徒達と柳生さんの交流の様子

このワークショップのために生徒達は黒板に歓迎のメッセージと絵を描きリボンストラップを手作りし、お礼の手紙とともに柳生さんにプレゼントしました。
今でも生徒達と柳生さんの話をして盛り上がっています。

私たち小平第五中学校8組にとって、とても良い体験となったデジタルアートワークショップでした。

デジタルアート
ワークショップ
とは?

デジタルアートワークショップ

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